☆論文形式の問題になるのは必然的なのだが、論理的思考に加え、発想やクリティカルシンキングなど≪higher order thinking≫という高次思考の論文試験となる。今までは論文試験でも低次思考で十分だった。
☆≪higher order thinking≫? いったいそれは何ものなのか?実は、そのロールモデルといもいうべき問題が、今年東大推薦入試、京大特色入試で公開された。
☆おそらく、これらは、2020年の大学の個別独自入試の方向性をほぼ決めることになるだろう。東大の推薦入試が、シンフリ制度が使えないから人気がないなど賛否両論あるが、それは、≪higher order thinking≫を一般試験にも広げられては、高校現場や予備校も今のところ困るので、現場の防衛機制というのが本当のところかもしれない。
☆狩猟時代、農耕時代、産業時代という時代の社会関連の変遷は、結局その変遷に適合する新しいテクノロジーが開発されてきた。いや、むしろテクノロジーに適合するように時代がシフトしてきたのかもしれない。したがって、AIを中心とするクリエイティブクラス時代も社会の変化は回避できない。STEAM教育、アクティブラーニングなどの学びの環境は回避できないし、≪higher order thinking≫の思考レベル育成も必然なのである。
☆いずれも、自分軸と探究の立ち位置の関係を問うている。海外の大学で求められる“Who are you?”に対する≪higher order thinking≫レベルの考え方とMFO(mann for others)Mindsetの両者について、日本もようやく生徒に求めることになるのである。また、法学部のグループ・ディスカッションの段取りはこう提示されている。
☆2020年の大学入試改革はいったいどうなるのだろう?教育関係者も保護者も、何より生徒は不安でたまらず、玉石混交の情報に右往左往している昨今。
☆しかし、制度がどうあれ、入試問題がどうなるのかそれさえ予想がつけば、何をやるべきか明快になり、得体のしれない不安は払しょくされるだろう。もっとも、知識の記憶の多寡を問うのではなく、かなり高いレベルの思考力を目指すというのだから、果たしてどう学べばよいのか、学び方に対する不安がまた発生してしまう。
☆だが、自分の才能を生かせる思考力問題のトレーニングとあれば、なんとかなるだろう。そこで2020年の大学入試問題を予想してみようではないか。
(工学院大学附属中学校高等学校のiTeam:イノベーションチームの先生方は、≪higher order thinking)を育成する授業・テスト・評価を開発している。)
☆2020年の大学入試問題と言った場合、新聞や情報誌で話題になるのは、「高等学校基礎学力テスト(仮称)」や「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」であるが、これはそう難しくない。問題は、その後の大学の個別独自入試問題がどうなるかだ。
☆論文形式の問題になるのは必然的なのだが、論理的思考に加え、発想やクリティカルシンキングなど≪higher order thinking≫という高次思考の論文試験となる。今までは論文試験でも低次思考で十分だった。
☆≪higher order thinking≫? いったいそれは何ものなのか?実は、そのロールモデルといもいうべき問題が、今年東大推薦入試、京大特色入試で公開された。
☆おそらく、これらは、2020年の大学の個別独自入試の方向性をほぼ決めることになるだろう。東大の推薦入試が、シンフリ制度が使えないから人気がないなど賛否両論あるが、それは、≪higher order thinking≫を一般試験にも広げられては、高校現場や予備校も今のところ困るので、現場の防衛機制というのが本当のところかもしれない。
☆しかし、この高次思考は、クリエイティブクラスとかインダストリー4.0、第4次産業時代と言われている新しいステージに突入して、産学ギャップが生まれていることに対する教育のパラダイムシフトであるから、飛ばなければ、子どもたちは未来を創ることができなくなる。
☆狩猟時代、農耕時代、産業時代という時代の社会関連の変遷は、結局その変遷に適合する新しいテクノロジーが開発されてきた。いや、むしろテクノロジーに適合するように時代がシフトしてきたのかもしれない。したがって、AIを中心とするクリエイティブクラス時代も社会の変化は回避できない。STEAM教育、アクティブラーニングなどの学びの環境は回避できないし、≪higher order thinking≫の思考レベル育成も必然なのである。
☆そういうわけだから、昨年行われた東大の推薦入試についてまずは視てみようではないか。東大法学部の推薦入試において求められる学生像をみてみよう。
≪現代社会,とりわけグローバルな場でリーダーシップを発揮する素質を持つ学生。すなわち,優れた基礎的学力を備えるとともに,現代社会のかかえる諸問題に強い関心を持ち,実社会の様々な事象から解決すべき課題を設定する能力,さらには他者との対話を通じて,その課題の解決に主体的に貢献する能力を有する学生≫
☆MFO(mann for others)Mindsetと≪higher order thinking≫の両方が求められている。提出書類に関しては、入試要項では次のように記載されている。
≪各学部共通に求める調査書等のほか,志願者が本学部の推薦要件に合致することを具体的に証明する資料。
例えば,
・ 在学中に執筆した論文で,志願者の問題発見能力・課題設定能力を証明するもの
・ 社会に貢献する活動の内容を具体的に証明する資料(表彰状,新聞記事など)
・ 留学経験など,志願者が異なる文化的背景や価値観への理解を有することを示す資料(留学の事実を証明する
資料,外国人との交流や支援活動を行ったことを示す第三者の推薦状など)
・ 国際通用性のある入学資格試験における優秀な成績を証明する資料(国際バカロレア,SATなど)
・ 外国語に関する語学力の証明書(TOEFL,英検,IELTS,TestDaF,DALF,HSKなど)などです。
以上はあくまでも例示であり,志願者が本学部の推薦要件に合致することを証明できる資料であれば,上記以外の資料でもかまいません≫
☆MFO(mann for others)Mindset、≪higher order thinking≫のほかにハイレベルの4技能英語能力などが求められている。2020年大学入試改革のロールモデルと言わんばかりだ。提出書類のうち志望理由については、次のような問いが提示されている。
≪(1)現代社会においてあなたが重要と考える問題について,その理由を明らかにしつつ,具体的に論じてください。
(2)(1)で論じた問題について,あなたが今後どのように関わっていくのかについて論じてください。その際,東京大学法学部での勉学がどのように役立つと考えられるのかについて述べてください。
(3)その他,あなたが法学部で学びたいことや卒業後の進路などについて,自由に述べてください≫
☆ちなみに、医学部は、次の通り。
≪東京大学医学部医学科を志望する理由,高等学校等在学中の自己の活動の成果,卒業後の自己の将来像等についておよそ1,300字以内で入力してください。英語での入力も可です。(英語の場合は500 wordsまで。)≫
☆いずれも、自分軸と探究の立ち位置の関係を問うている。海外の大学で求められる“Who are you?”に対する≪higher order thinking≫レベルの考え方とMFO(mann for others)Mindsetの両者について、日本もようやく生徒に求めることになるのである。また、法学部のグループ・ディスカッションの段取りはこう提示されている。
(1) 審査員の合図があったら、この表紙を開いて課題文を読んでください。課題文を読む時間は5 分です。
(2) 5 分後にまた審査員が合図をしますので、グループ・ディスカッションを開始してください。
(3) ディスカッションの時間は55 分です。指定された時刻までに議論を終結させてください。
(4) 審査員は議論の進行に関与しません。決定のしかたや議論の進め方はみなさんで決めてください。
(5) ディスカッション終了の時間までに、ディスカッションで到達した主要な結論をまとめてください。ただし、全員が同じ結論に到達する必要はありません。複数の結論を含んだまとめでも結構です。また、到達した結論について審査員にプレゼンテーションを行う必要はありません。
(6) このグループ・ディスカッションはみなさんの論理的思考力、発想力、コミュニケーション能力、チームで作業する能力などを審査するためのものであり、思想・信条を評価の対象とするものではありません。
☆提示された課題文は、次の通り。
(1) 世界各国、特に経済的に豊かな先進諸国は、難民の受け入れに努めなければならない。現代世界では、自国の国民ではなくても、生命と財産を脅かされる人々を支援することは国際的な責任である。
(2) 難民が生まれる原因となった内戦の終結を急がなければならない。この目的を達成するためには、国連安全保障理事会の決議に基づいた武力介入を行い、交戦勢力の戦闘を停止させる必要がある。
(3) 難民キャンプの設立とその安全の確保が必要である。A 国と接する地域に難民を集めることによって、故国から遠く離れた土地への移住を強いることなく人々の暮らしを支えることができるだろう。
この(1)、(2)、(3)のそれぞれについて、どのような効果を期待でき、またどのような限界があるのか、その効果と限界を論じなさい。この議論を踏まえて、A国の難民危機について望ましい対処方法を考えてください。考えられる対処方法は(1)、(2)、(3)に限る必要はありません。また、対処方法を一つに限定する必要はありませんが、複数の方法を提案する場合には、どれを優先すべきかを明らかにしてください。
☆これは、実におもしろい。(1)~(3)の考え方は、すでにカントの「永遠平和のために」でクリティカルチェックされているものだ。おそらく、今まで戦争・平和・難民問題などは、この近代国家黎明期のカントの発想を巡る思考が展開してきたことだろう。
☆しかし、この問題は、近代国家観が変わる今日にあって、カントの思想そのものに挑戦しなさいと言っているのだ。「A国の難民危機について望ましい対処方法を考えてください。考えられる対処方法は(1)、(2)、(3)に限る必要はありません」とは、そういうことだろう。つまり、≪higher order thinking≫。2020年の大学入試改革がどうあれ、大学の個別独自入試は、こう変わらざるを得ないのである。
(2016年10月3日ホンマノオトの記事を改題)